オリバー・ツイスト ★★★☆

OLIVER TWIST
2005 スコープサイズ 129分
DVD

オリバー・ツイスト プレミアム・エディション [DVD]
■その昔、デビッド・リーンも撮った小説をロマン・ポランスキーが再度映画化したのだが、お涙頂戴の感動作ではないところが、らしいところ。確かに、お涙頂戴にもできそうな原作だが、後半はむしろサスペンス映画として非常に秀逸な演出を見せる。そういえば、「ローズマリーの赤ちゃん」とか「チャイナタウン」といった名作を撮った監督なのだ。もちろん、最近作の「ゴースト・ライター」も。
■ただ、作劇としては9歳の少年がただ運命に翻弄されるだけで、主体的に動かないから、ドラマ的なカタルシスは乏しい。一方で、後半にぐんぐん悪の本性を発揮するビル・サイクスの暗躍がサスペンスを加速させ、少女情婦を撲殺したかと思えば、可愛がっていた犬まで運河に沈めようとする。このあたりの悪逆非道が抑えたタッチで、コミカルに描かれるあたりに、ポランスキーの演出の冴えが顕著。ネタばれになるから具体的には書かないが、特に犬との絡みは素晴らしい。
■作劇的には、貧民窟の表現にもっとリアリティが欲しいところだし、ナンシーが少年に肩入れするあたりの掘り下げも欲しいところだ。無残に殺されてしまうのだけどね。
ユダヤ人監督としては、ユダヤ人の小悪党フェイギンの描き方に注目が集まるところだが、性格的な悪はビル・サイクスに割り振り、フェイギンは生きるためのやむを得ない、”なりわいとしての悪”として描いている。そして、国家、社会の矛盾や不備が生んだ”なりわいとしての悪”も、国家権力によって容赦なく処刑されることを示して、真の無慈悲がどこに存するかをさりげなく提示して映画は終わる。9歳の少年はその間、成長せず、少年という存在の光が社会に巣食うさまざまな悪を照らし出してしまうという、そういう作劇になっているようだ。

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