狐の呉れた赤ん坊 ★★★☆

狐の呉れた赤ん坊
1945 スタンダードサイズ 85分
KBS京都
原作■谷口善太郎 脚色■丸根賛太郎
撮影■石本秀雄 照明■?
音楽■西梧郎 美術■川村鬼世志
監督■丸根賛太郎

■意地と強気で捨て子を育てることになった川渡しの人足がほんとうの情愛に目覚めてゆく様子を描いた人情喜劇。坂妻の不世出のキャラクターがよく生かされた、非チャンバラ時代劇。なにしろ、公開が昭和20年というから驚く。よくもこんなに牧歌的な心温まる映画を作る余裕があったものだ。それも(大規模な)空襲を逃れた京都ならではのことだろう。戦後の荒廃した人心に一服の清涼剤をという企画意図があったのかもしれない。
■捨て子は実はさる大名の御落胤で、というのがお決まりの展開だが、城から来た藩の重役たちに親子の情愛について切々と語る部分など、素朴ながらいい台詞が多く、素直に心を打つ。ラストの別れを晴れやかに締めくくったのも好ましい。いまの日本映画なら、もっと長々と泣き代を作るところだろうが、簡潔にファーストカットと対応する構図で十分に演出意図は達しており、子の幸せのためなら死すら厭うものではないという親の心の機微を爽やかに描ききっている。
■ほんとにこういうチャーミングな映画は日本映画の宝ですよ。中島貞夫の邦画招待席で途中にCMを挟まずに(多分)ノーカット放送。三隅研次のリメイク版も観たいのだが。