モールス ★★★★

LET ME IN
2011 スコープサイズ 116分
TOHOシネマズ二条(PS)

モールス [Blu-ray]
■アパートの隣に越して来た美少女は、吸血鬼だった・・・というスウェーデン映画「ぼくのエリ」のハリウッドリメイクだが、製作はなんとハマーフィルムという、正統派吸血鬼映画。そして、心震える瑞々しい傑作。
■「ぼくのエリ」は未見なのだが、この映画単独で観れば、十二分に傑作と呼べる完成度である。脚本、監督は「クローバー・フィールド」のマット・リーヴスだが、あの映画のラストシーンに込められた妙な感傷は伊達ではなかったことがよくわかった。本作は、12歳の少年、少女のナイーブな初恋を丁寧に描くところに眼目があるが、これが実に見事。グレッグ・フレイザーの撮影も絶妙で、被写界深度を浅くとってボケ味をたっぷり生かした画作りで、12歳の小さな世界を生々しく伝える。
■吸血鬼少女との初恋だけでなく、その行き着く先の人生の無残さと甘美さを提示する作劇の工夫は、原作によるものだろうが、メロドラマの工夫としては最高のできばえだろう。それを踏まえて、主人公の少年がラストでくだす選択の意味合いがより複雑な陰影を帯びることになる。少女を庇護するオヤジのエピソードには、中盤大きく泣かされる。魔物に魅入られた男の末路ということで言えば、先日見たダリオ・アルジェントの「ジェニファー」に通じるところがある。
■物語の設定を1983年とし、ソ連は悪の帝国であり、アメリカは正義であるというレーガンの単細胞な演説を冒頭にふっておき、吸血鬼少女と出会って、主人公にこの世に悪は実在するの?と問わせる脚色は、マット・リーヴスのもので、作家の賢さが際立つ。こんな芸当、日本映画ではできません。