唐獅子警察 ★★★

唐獅子警察【DVD】

唐獅子警察【DVD】

  • 発売日: 2010/11/21
  • メディア: DVD

唐獅子警察
1974 スコープサイズ 90分
DVD
原作■かわぐちかいじ滝沢解 脚本■野上龍雄
撮影■赤塚滋 照明■北口光三郎
美術■鈴木孝俊 音楽■広瀬健次郎
監督■中島貞夫

中島貞夫が描く、東映版「サンダ対ガイラ」。サンダ役の小林旭も好演だが、ガイラ役の渡瀬恒彦の熱演、力演はなにものにも代えがたい。若さにまかせて暴れまわる命知らずの鉄砲玉を熱く演じて独自の境地を拓いてしまった渡瀬恒彦の代表作のひとつだ。
舞鶴の貧しい漁村といった風情の、二人の主人公の生まれ故郷だが、部落出身の異母兄弟の話として演出したと中島貞夫は語っている。分かる人には分かるだろうが、観客全員が分かる必要はない、というスタンスだが、はっきりとそう描けば部落解放同盟への根回しが必要になるから、避けたわけだろう。しかし、タイトルバックには、異母兄弟の生い立ちを簡潔に示す漁師町の情景写真が提示され、出身の学校名など、何気なく地名が表示されているから、念が入っている。
■しかも、この漁村の人々の描き方はリアリズムではなく、戯画化され、象徴化されており、いわゆる部落問題という地平の上で解決される事件としてではなく、差別であり貧困であり崩壊した家庭環境であり、そうした境遇の中で育った兄弟の運命的で普遍的な相克をギリシャ悲劇のように紡ぎだすところに眼目がある。そんなことを考えるのは中島貞夫くらいである。
■ただ、映像的には東映のもっと技術的に荒れていた時代なので、映像表現としてのコクは乏しく、セットも非常に貧乏くさいし、キャメラも雑である。アクション演出もほとんどギャグに近いピラニア軍団の怪演が、深刻劇のはずの本作を風通しのいい軽快作に見せてしまう。ラストの小林旭がハンドルに文字通り噛り付いて運転する迷シーンなど、その最たるものだろう。
被差別部落内でさらに住人達から差別されて育った兄弟が生きてゆくためにはヤクザになるしかなかったが、結局ヤクザ社会からもはみ出し、生まれ育った部落の中で住民たちに唾棄されながら自滅してゆくという、全くこの世の中に居場所のなかった男たちの挽歌は、しかし、ひりひりと胸に沁みる。

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