総会屋錦城 勝負師とその娘 ★★★

総会屋錦城 勝負師とその娘
1959 スコープサイズ 112分
日本映画専門チャンネル
原作■城山三郎 脚本■井手雅人
撮影■小原譲二 照明■久保田行一
美術■仲美喜雄 音楽■大森盛太郎
監督■島耕二

城山三郎直木賞受賞作を井手雅人が家庭劇として描いたなかなかの力作で、意欲作。総会屋が映画の主役として登場したのは、おそらく日本映画で初めてのことだろう。その後も東映実録路線の「暴力金脈」くらいしか思い浮かばない。総会屋の志村喬とその娘の叶順子の確執と遅すぎた和解を描き、総会屋活動と家庭劇をほぼ半々でバランスをとっている。井手雅人という脚本家はほんとに上手い。

■大洋銀行の総会を命がけで仕切ってみせる老総会屋を志村喬が大迫力で演じ切って圧巻なのだが、最後には総会屋はダニだと述懐して総会屋否定に至るという倫理的な結末となっている。このあたりは、原作通りなのかどうか疑問なところだ。志村喬が臨終間際に今何時だと、最後まで時計を気にしていたのは、総会屋としての習い性なのか、それともというラストの種明かしも、実にうまく考えたものだ。日本映画黄金期のレベルの高さを思い知らされる。

■贅沢なモノクロ撮影の妙味も見どころで、人物を前景とした構図を多用しながら、ピントが手前から奥までばっちり合っているというパンフォーカスの技法をこれでもかと披露する。当然、照明効果も非常に技巧的で、モノクロ映画の映像作りの面白さを見せつける。

■ただ、暴力組織の関与は明確に描かれず、主人公は一種の一匹狼の壮士として描かれる。そこに物足りなさも感じる。

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