『広田弘毅 「悲劇の宰相」の実像』

城山三郎の小説「落日燃ゆ」は実際かなり面白い小説なのだが、それはあくまで小説としての出来栄えの話で、史実とは必ずしも一致しないということを史料によって実証を試みたユニークな書物。1930年代の日本の外交政策を中心に広田のできたこととできなかったことを腑分けしてゆく。

■論旨は明確で力強く、悲劇の人という面もあるが、政治家としては端的に力不足であったという結論を導き出す。特に”南京事件”の重大性について閣内に諮ることを怠ったことが致命的であったと語られる。

■「落日燃ゆ」と併せて読むと、興味は一層深まる。

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