無頼の女房 ★★★☆

無頼の女房
2010年 東京ヴォードビルショー 紀伊國屋ホール
NHK教育 劇場への招待
作■中島淳彦 美術■石井強司 演出■中島淳彦
出演■佐藤B作、石井愃一、市川勇、山口良一、たかはし等、あめくみちこ、まいど豊、京極圭、金澤貴子、斉藤清六、大西多摩恵、井之上隆志土屋裕一

坂口安吾とその妻の激烈な夫婦生活をモデルとして、太宰治まで登場する、文芸コメディ(?)。2時間30分近い大作だが、期待以上に面白かった。中島淳彦が他の劇団に書いた戯曲を佐藤B作が熱望して上演したものらしい。確かに演劇としての完成度は高い。

■ラストの決着は呆気なさに十分な説得力が無く、今ひとつだと思うが、特に豊臣治(太宰治)が登場する中盤からドラマとしては急激に面白くなってくる。これは豊臣治を演じた土屋裕一の好演によるところが大きく、結果的に本作でもっとも儲け役といえるだろうし、実に巧く演じているのだ。重要な脇役で井之上隆志が本領発揮しており、ますますこの役者好きになった。

■他にもほんとに脇役の市川勇なんて、実に絶妙な脇役ぶりで、頼もしい。その姿と顔がそこにあるだけで、舞台空間の物語性が規定されるという、離れ業を演じる。舞台装置としての演技とでも呼ぼうか。

■結局、脇役たちが癖が強すぎて、主役であるはずのあめくみちこが霞んでしまった気もするのだが・・・


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