テレビドラマ雑感〜わたしは箸棒ドラマを観た〜

三谷幸喜の「わが家の歴史」3部作を観た。一言で言って得体の知れないドラマだった。ゴールデンウイークを棒に振るに相応しい無内容なドラマ、というかドラマ以前かもしれない。もちろん、HDD録画で2倍速(実質的には1.5倍くらい)で観ているわけだが、正味で5時間以上の大作ドラマなのに、昭和を生きた平凡な一家の年代記がひたすら上滑りに描かれ、三谷スタイルのギャグが時々散発的に小噴火を見せるものの、いったい何がしたいのか、ひたすら理解に苦しむドラマだった。昭和回顧で感動的にという三丁目の夕日路線に安易に乗りはしないぞという意地からドラマをひねり過ぎたのかもしれないが、それにしても酷い。
長澤まさみが、深窓の令嬢として登場して、東大にまで進むものの、洞爺丸遭難事故に巻き込まれて記憶喪失、ストリッパーに身を落とし、遂には赤線地帯で身体を売るまでに零落するという役柄で、それだけで真面目なドラマを作ろうとしていないことが一目瞭然だが、まったく誰に見せたいドラマなのか?木下恵介の無名の庶民の人生を真に尊いものとして描いた年代記もの映画を知っている世代には、まさに噴飯ものだ。オムニバス・ジャパンほかのCGスタッフによるVFXもやけに低品質で、観ていて恥ずかしい。
■しかし、実はもっと極端な箸棒ドラマがあって、例の「大魔神カノン」という深夜ドラマだ。第1回を見て頭を抱えたが、第2回はさらに酷くて早回しで観てしまった。そして挫折。ドラマの態をなしていないし、一ミリたりとも面白くない。三池敏夫特技監督デビューというフックはあるものの、作品としては完全に製作者の独りよがりに陥っている。
■テレビドラマは唯一NHKが意欲的といえ、受信料はあまりに高すぎると思うが、ドラマのクオリティは民放の追随を許さない。現在、朝ドラで話題となった「ちりとてちん」も再放送中だが、スタジオドラマの醍醐味を味わわせてくれる。よく練られた脚本も心地よいが、役者陣の即興性を生かした演出がテレビドラマならではの楽しみで、特に主演の貫地谷しほりのリアクション芝居は笑わせてくれる。少々やりすぎの気配もあるが、テレビドラマだからその勢いあまった部分の愛嬌が魅力になる。

© 1998-2024 まり☆こうじ