源氏物語千年紀頌 夢の浮橋 ★★★☆

源氏物語千年紀頌 夢の浮橋
ハイビジョンステージ NHK hi
2008年 宝塚大劇場 月組公演
作■大野拓史 作曲・編曲■高橋城、太田健、高橋恵 演出■大野拓史
出演■瀬奈じゅん霧矢大夢羽桜しずく遼河はるひ、萬あきら

宝塚歌劇は結構当たり外れがある気がするが、これは当り。作、演出の大野拓史は日本物のホープと呼ばれているそうだが、まだ比較的若いのに、時代劇の魂を掴んでいる。日本映画全盛期の東映大映の時代劇や商業演劇の時代劇などを見知っている世代かと思いきや、そうした良質のものが失われて以後に生まれた世代の作者だ。
■宇治十帖の世界に材を取り、匂宮、薫、浮舟の三角関係を中心に、宮中の政局が絡み、宮中に暮らす事の非人間性を、傀儡(くぐつ)や形代(かたしろ)といったモチーフに託して描く、文学性の高い舞台だ。弱点は、とにかく人間関係が複雑なので、予備知識がないと着いていけないことで、映画なら労働者階級が途中から見ても分かるように、もっと簡潔に刈り込むように指示が出るところだが、宝塚の場合は、それなりの客層が期待できるので、あえて作者の意図を残したというところだろう。
■中盤の宇治田楽を取り入れた幻想的なスペクタクルは特に秀逸で、光源氏が傀儡人形として立ち居出る趣向は圧巻だった。傀儡子をはじめとする芸能の民の土俗的な群舞は、伊福部昭による東宝特撮お馴染みの場面を彷彿させ、東宝テイストも満点だ。というか、東宝映画の群舞は宝塚歌劇に由来しているので、逆か。この場面の開放感は、貴族社会の息詰る政略と謀略の非人間性と対照を形成する部分なので、平安時代の平民たちの息吹をもっと打ち出しても良かったと思うぞ。(続く)
■中国映画が様式的な古典劇で世界制覇を狙う昨今、日本映画が世界に打って出る超娯楽要素としては、宝塚歌劇は打ってつけの題材だと思うのだが、何故注目しないのだろう。というか、東宝は何しているのか。中国映画のアクションにはかなわないが、こちらには歌と踊りがあるというのに。