神様とその他の変種 ★★★

神様とその他の変種
ミッドナイトステージ館 演劇は今 NHK BS2
2009年 NYLON100℃ 33rd SESSION 本多劇場
作■ケラリーノ・サンドロビッチ 美術■BOKETA 照明■関口裕二 音楽■朝比奈尚行 演出■ケラリーノ・サンドロビッチ
出演■峯村リエ山内圭哉犬山イヌコ山崎一水野美紀みのすけ大倉孝二、長田奈麻、植木夏十藤田秀世、廣川三憲、猪岐英人、白石遥

■ケラといえば、その昔TBSラジオの深夜放送のパーソナリティーをやっていて(と思ったら、「ケラとRIKAのヤングプラザ」というABCラジオの番組だったみたい。何故、ABC?)、インディーズのナゴムレコードを主宰し、劇団健康で、いかにもアングラ的な演劇活動も行っていると語っていたものだが、今や日本を代表する演劇人に成長ですよ。何事も継続は力ですな。

■とはいえ、ケラの舞台を見るのは始めて。しかも長い。たっぷり3時間だ。基本的に小学生のこどもを持つ二つの家族の物語で、冒頭からかなり陰惨な事件が隠されている事が仄めかされるのだが、果たしてその真相は、ということで、ちゃんと後半に真相が明かされ、単に後味の悪いグランギニョルではないことがわかる。小学校におけるいじめや家庭内においてスポイルされるこどもの姿と、そこに関わる父母の姿、さらに彼らの世界と対峙する動物園の動物たちの存在を包括的に描くため、3時間という長編になってしまうわけだ。

ポチたまで有名な犬山イヌコの正統派(?)女優としての実力もよくわかったし、映画やテレビではワンポイントの脇役として登場する山崎一の演技者としての底力も発揮され、近年意欲的に演劇に取り組む水野美紀も安定した演技力を見せるし、大倉孝二の曲者ぶりも驚愕だが、映画や商業演劇ドラマツルギーに染まった目にはドラマの終着点が見えにくい。まあ、上記のドラマに、満遍なくギャグがまぶしてあり、自称神様を巡る終幕のドタバタぶりなど、吉本新喜劇的でもあるので、3時間退屈はしないし、役者の演技の質的にも堪能するのだが、まだその演劇としての真価はよくわからない。

■音楽担当の朝比奈尚行は、「ロボット8ちゃん」「バッテンロボ丸」とかNHK教育でも見かけた、あの朝比奈さんですよ。演技、音楽、美術と幅広く手掛ける謎の人だ。近年は”あさひ7オユキ”を名乗っているらしいが、昔は自由劇場近辺にいたはずで、「シルバー仮面」にも村松克己とともにゲスト出演しているし、懐かしの(?)NHKFMのラジオドラマ「闇のヘルペス」(出演・岸田森草野大悟)の音楽も手掛けている新劇=特撮人脈に属する人だ。

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