■太平洋戦争前後、太宰が結婚して子をもうけながら愛人と心中するまでを、意外にも軽妙なタッチで描くのだが、正直あまりよくできた脚本ではなく、テーマもはっきりしない。ただ、主演が豊川悦司と寺島しのぶなので、安心して観ていられる。特にトヨエツは好演で、太宰治の人間像としては、それなりにひとつの像を結んでいる。
■しかし、一番褒めたいのは演出と作曲で、劇伴のピアノ曲は、近年メロディの明確な劇伴が避けられる風潮にあるなかで、秀逸だった。しかし、作曲者の表記は無く、選曲・効果の遠藤浩二が書いたのではないかと思うのだが、詳細は不明だ。既成曲ならそれなりのクレジットがあるだろうし、近頃のTBSドラマは謎が多い。平野俊一の演出は、TBSのスタジオドラマの伝統を感じさせ、失敗した心中のイメージシーンの挿入など、80〜90年代のビデオドラマ的で懐かしい。
■出演は、豊川悦司、寺島しのぶ、菅野美穂、池内博之、伊藤歩、伊佐山ひろ子、小市慢太郎、佐藤二朗、西田健、田島令子、尾上紫、山内菜々、橋爪功と豪華。