『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序―ENTRY FILE 1』

エヴァ新劇場版のメイキングムックだが、オールカラーで、コンパクトな版型に濃厚な編集で、非常に充実した内容。値段もこのてのものとしては控えめでお買い得。
■本編の眼目であるヤシマ作戦の部分は樋口真嗣が画コンテを担当したが、「妖星ゴラス」や「キングコング対ゴジラ」を意識した、乗り乗りで膨大な内容だったので締め切りまでに間に合わせるために相当割愛したという舞台裏も明かされるし、そもそもデジタル制作によるアニメで”撮影監督”という役職はいったい何をする人なのかということが、少し判明する。撮影というよりも、実態としては合成技師ではないのか?このあたりの最新のアニメ制作システムの実態が興味ぶかい。
第三新東京市の描写にはCGが多用されているが、総監督の指示は「ミニチュア特撮のように」というものだったとか。だから、そんなに特撮好きなら特撮映画撮れよ。実際、今回の新劇場版エヴァの面白さは、”特撮”演出が徹底されているところで、正直、特撮映画の代替品として愛玩しているところが、個人的にはある。場面によってはCGっぽさが浮いているところもあるが、エヴァの出撃プロセスや第三新東京市が戦闘形態に移行してゆく場面、ヤシマ作戦のディテールの積み重ねなどは特撮映画の醍醐味なのである。
■なにしろ総監督がCGの活用に不慣れな上に、新会社の制作第一作ということもあり、制作パイプラインが確立されていないことから混乱と非効率が生じていたらしく、美術監督の加藤浩がそのあたりは素直に告白している。こうした記録が貴重なのだ。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序―ENTRY FILE 1

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序―ENTRY FILE 1

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