ライラの冒険 黄金の羅針盤 ★★★

THE GOLDEN COMPASS
2007 スコープサイズ 112分
DVD

ライラの冒険 黄金の羅針盤 コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
クリス・ワイツの監督作で、ニコール・キッドマンも出演するニューラインシネマの超大作ファンタジーだが、脚本で失敗している。世界観の描き込みとか設定が云々とかいうよりも、悪の組織”教権”とその手先らしいニコール・キッドマンの関係や性格付け、もっといえば目的が不明確なので、物語がどこに向かっているのか掴めないのが大問題。ライラの叔父であるアスリエル卿も、見た目が悪役なので、単純に観ていて混乱する。しかも、途中で姿を消すという重要な場面があるのだが、その後すっかり忘れさられてしまう。この部分はもっと端的にシンプルな語り口で構成しないと、特に子供には理解できないと思うぞ。ジプシャンの子供たちがさらわれるという重要な事件もいつの間にか起こったことになっており、観ていて混乱する。
■ただ、ライラがニコール・キッドマンと別れてから始まる極北の地での冒険活劇の部分が、実はなかなか痛快で、迷いの無い活劇の連続として描かれ、冒頭1/3の不調を吹き飛ばす。ライラの機知というか悪知恵で窮地を脱してゆくあたりが楽しく、ボーイッシュな美少女ダコタ・ブルー・リチャーズがぴたりとハマる。この両性具有的な妖しい美を発散する子役の存在感は確かに掘り出し物で、この映画を救っている。
■しかし、この映画の真の主役は巨大な白熊イオレク・バーニソンであろう。酒にありつくために人間達に奴隷としてこき使われる無残な姿から、ライラと出会うことで白熊としての誇りを取り戻してゆくエピソードは、素直に感動的だ。緒形拳が日本語吹替えを担当しているのは、ちょと老け過ぎで、山寺宏一くらいがちょうどいいはずだが、ライラの窮地を絶妙のタイミングで救う颯爽とした活躍、熊王国で明かされる意外な真実など、ドラマの濃さでは、本編の主役に相応しい。熊王国での、白熊同士のドツキ合いは、CGによるアクションも出色で、秀逸なCGアニメだ。正直、予告編を見たときには、白熊がどつき合う映画の、どこを面白がれというのかと不思議に思ったが、まさにこの映画の核心は殴りあう白熊のアクションにあり、しかも、それが最大のドラマ的な、感動的な見せ場にもなっている。全世界の熊好き(?)には、最高のプレゼントだよ。

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