華々しき一族 ★★☆

華々しき一族
NHK教育 劇場への招待
2008 明治座 
原作■森本薫 脚本■大藪郁子 演出■石井ふく子 音楽■KOBUDO
出演■若尾文子西郷輝彦藤谷美紀、松村雄基、吉野紗香、徳重 聡

■森本薫が1935年に発表した戯曲を原作にした舞台だが、相当に違和感の残る脚色だ。杉村春子の当たり役だった役柄を若尾文子が演じるが、舞台演技としては、さてどうだろう。
西郷輝彦の役柄が昭和10年代中盤の映画界、具体的には松竹映画で美術制作を請け負う会社の社長というものだが、いったい撮影所システムがフル稼働していた時代に、美術制作会社というものが存在したのか、しかもそんなに儲かる仕事だったのか、映画史的に正しい事実に基づいているのかどうか、どうでもいいことが最初から最後まで気になって仕方なかった。いまでこそ、映画の美術制作を美術工房がまるまる請け負うことはありうることだが、撮影所から独立した制作会社というものは、撮影所システムの崩壊やテレビ、CM制作システムの興隆という現象と並行して興ってきたものだと思うのだが。しかも、そんなに大きく儲かる業界ではないのではないか。原作戯曲ではストレートに映画監督であった役柄を、無理やり変更したための違和感なのだが、意図を図りかねる。
■役者では松村雄基が純粋で一本気の青年像を素直に力強く演じて、気持ち良い。吉野紗香は、ちょっと弾け過ぎで、キンキン声は耳が痛い。

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