愛と死のアラビア ★★★☆

『愛と死のアラビア』『Red Hot Sea』 [DVD]

『愛と死のアラビア』『Red Hot Sea』 [DVD]

愛と死のアラビア 高潔なアラブの戦士となったイギリス人
NHKBS2録画
2008 宝塚花組公演 宝塚大劇場 
作・演出■谷正純 作曲・編曲■吉崎憲治 原作■ローズマリ・サトクリフ
出演■真飛聖桜乃彩音大空祐飛壮一帆、桜一花

■19世紀初頭、オスマントルコとの戦争中、エジプトで虜囚となった狙撃兵トマス・キースはベドウィンの騎兵隊の戦術指導に協力するうち、ムハンマド・アリの息子たちと意気を通じる仲となるが、オスマントルコ将官を決闘で殺したことから、宗主国はアリにキースの処刑を要求する・・・
■史実に基づいた小説をミュージカル化したもので、キリスト教イスラム教の対立と、そのなかで言葉や名前は違っても神はひとつ、おなじものだと主人公が悟る物語。そして、自ら進んでエジプト独立のための捨石となることを決意する悲愴なラストを迎える。物語は正攻法の時代劇であり、典型的な政治的活劇である。しかも、なかなかの佳作。楽曲には魅力が少ないが、例えば伊藤大輔の「反逆児」や「元禄美少年記」といった悲壮感溢れる非業の死を描いた重厚な時代劇によく似ており、正統派の時代劇であるといえる。「バレンシアの熱い花」も時代劇だったが、活劇としての重厚さと密度はこちらが勝る。
■恋愛劇としては堀込が浅いので、多分女性ファンには不評だろうが、政治的活劇として男性ファンには必ず訴求するに違いない。行き場の無いVシネファンなども、試してみてはいかがか。
■クライマックスで、エジプトの太守がオスマントルコの政治的圧力でトマス・キースの処刑を飲まざるを得なくなるあたりが見事な見せ場で、長男イブラヒム(大空祐飛)、次男トゥスン(壮一帆)の描き分けがよく効いている。トマス・キースに対して立場を超えて親密な友情を育んだトゥスンと、政治情勢を含めて客観的な判断が可能なイブラヒムという性格の描き分けで、トマス・キースという人物を違った角度から照射してみせる作劇は、巧い。ただ、ラストは女性ファンのために歌と踊りで締めくくり、処刑までを見せないのが不徹底で、例えば四季の「南十字星」などと比べるとやはり劣って見えてしまう。
真飛聖という人は、インタビューシーンでは、真矢みきに似た顔立ちで、しかも色白の美人なのだが、堂々たる男役で圧巻。アノウド役の桜乃彩音は、インタビュー篇ではまだまだ初々しい生徒さんといった風情で、役では「お兄様」と連呼するのは、萌え要素を狙っているとしか思えないのだが、若いヲタクの方々は宝塚を観るのだろうか?

血と砂―愛と死のアラビア〈上〉

血と砂―愛と死のアラビア〈上〉

血と砂―愛と死のアラビア〈下〉

血と砂―愛と死のアラビア〈下〉