レッドクリフ part1 ★★★

赤壁
2008 スコープサイズ 145分
ユナイテッドシネマ大津(SC3)

レッドクリフ Part1 オリジナル・サウンドトラック
■長い、長い。巻頭、感情移入もサスペンスも無い戦闘シーンが延々と続き、いいかげん眠くなってくるのだが、クライマックスの八卦の陣は奇想天外な集団アクションはさすがに見せる。しかし、お話の内容的には2時間で十分ですよ。高田宏治ならもっと各キャラクターのエピソードを効率的に描きこんでくれるだろう。
金城武が天才軍師孔明を演じるというのはどんな冗談かと思いきや、意外にもはまり役。金城武の二枚目ぶりと存在感のスケールの大きさが遺憾なく発揮され、日本語の台詞はたどたどしい彼も、中国語なら生き生きとして見える。いつも困ったような顔をするトニー・レオン周瑜を演じるにあたっては時代劇メイクのおかげもあって、男臭さが増強されている。その他のキャストが中村獅童を除いて日本人にとっては無名な役者ばかりなので、いまひとつ観ていて力が入らないのは、やはり欠点で、こうした顔見世映画はオールスターキャストであって欲しかったと惜しまれる。
■どうしてもエピソードの組み立てが未熟で、観ていていらいらするのだが、後半の劉備軍と孫権軍が同盟を結んで曹操軍を奇策で迎え撃つあたりから、アクション映画の醍醐味がやっと燃え上がり、八卦の陣の集団アクションについては、アクション映画史上でも特筆に価する演出が見られる。集団アクションの全体像をVFXを使用した雄大な俯瞰ショットで描き出し、その陣の内部の各所で戦われる流血の接近戦を臨場感たっぷりに描出する。しかも、要所要所には待ってましたと劉備軍の劇画チックな猛将たちが姿を現し、曹操軍の雑魚どもを痛快になぎ倒して見せる。このあたりのカタルシスは近年のアクション映画でも稀なものだ。これは映画館で観ないと値打ちが無いよ。
■総じて、こうした戦国武将もの(おおまかに言って)は軍師や武将たちの俯瞰目線から描かれ、白兵戦で血を流す兵たちはその他大勢として描かれるのが常であって、この映画も例外では無いが、主人公たちのいかにもスター俳優的な面構えに対して、所々に挿入される兵たちのあどけなさや素朴さが際立つ多くの顔立ちがうまいコントラストを形成して、三国志の時代に生きた人間達(おもに男たち)の息吹を立体的に感じさせる。なにしろ長いのだから雑兵たちのエピソードなども入りそうなものだが、あくまで点描に止まっているのが少々残念な気もする。

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