不撓不屈
2006 ヴィスタサイズ 119分
DVD
原作■高杉良 脚本■竹山洋
撮影■長沼六男 照明■松井博
美術■金田克美 音楽■服部克久
監督■森川時久
■昭和38年、中小企業者に脱税(別段賞与による節税)を指南したとして飯塚税理士(滝田栄)を国税庁が告訴した飯塚事件を実録映画化した、非常に地味な映画だが、いかにも作りがスポンサーサイドに気を使った作法なので、少々興ざめするところもある。特に、ドイツロケの場面は不要。
■昭和30年代のお上意識丸出しで、国家に楯突く一介の税理士など叩き潰してしまえと気勢を上げる国税庁の描き方は少々誇張もあるだろうが、確かにありそうな話で、社会党の代議士を頼んで国税庁の強制捜査を撤回させる中盤の展開もさもありなんというリアリティがある。松竹系の技術スタッフが、昭和30年代後半の舞台設定をCGに頼らず再現してみせ、案外予算がかかっている。
■第二次強制捜査に対して、国税庁長官の脱税もみ消し疑惑をどう使うかというところに、ドラマ的な勘所があり、そこにうまく家族のドラマを絡ませるのは、ベテラン竹山洋の脚本だ。ほとんどのドラマはどんなに大規模なものでも家庭劇を中心として構築しておけば、間違いはないというのが、映画100年の歴史が証明する劇映画のセオリーだ。山本薩夫が映画化していれば、家族のエピソードはもっと減って、国税庁の内情とか委員会審議などが克明に描かれただろう。
■主人公の家族たち、とくに子供たちが父親に対して従順すぎるのは説得力が無いし、特に意味不明なのが、禅の老師(北村和夫)の登場で、ほとんど劇的には無意味なので、スポンサーの特殊な意向だったに違いない。というか、事実をそのまま描いたらしいのだが、木に竹を接いだような描き方で、この部分は監督もやる気がしなかったのだろう。妻役の松阪慶子は、夫婦のエピソードが脚本的に比較的よく描けているので、精彩があり、最近の出演作ではもっともいい演技だと思う。
■制作はルートピクチャーズ。