ボクらの未来へ逆回転 ★★★☆

BE KIND REWIND
2008 スコープサイズ 101分
TOHOシネマズ二条(PSC)

■お話は、いくら下町の貧民窟的な空間とはいえ、いくら何でも貧乏人を馬鹿にしてるんじゃないかと言いたくもなるほどに現実離れしたコメディで、ハリウッド映画の自家製リメイクに行きつくまでに既に、どのあたりにリアリティの基準を設定しているのか、観客としては混乱を来たしているに違いないのだが、ファッツ・ウォーラーというジャズマンの伝記映画の製作に収束するクライマックスでは、すっかり感動させられる。ある意味で「虹の女神」のアメリカ版といえるかもしれない。

■いかにも絵に描いたようなホワイト・トラッシュをジャック・ブラックが演じてこれは完璧な人間像だし、相方のモス・デフもフヌケた感じが松竹新喜劇の頭の弱い善人を思わせ、下町人情喜劇の道具立ては揃っている。ジャック・ブラックの配役はキングコングつながりだろうね。ミシェル・ゴンドリーは「キングコング対ゴジラ」を観ているに違いない。他にもミア・ファローが登場するのは「カイロの紫のバラ」へのオマージュだろうか。シガニー・ウィーバーまで登場するのも驚く。

■脚本としてはあまりコテコテにキャラクターのエピソードを回収してまわる方式ではなく、ラストの趣向に緩く集約してみせるやり方だが、冒頭にしつこく繰り返される裏写しが巧く生かされているのは感心した。本来の意味での伏線とはこうした手法のことを言うのである。

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