怪談 ★★

怪談 [DVD]
怪談
1964 スコープサイズ 183分
BS2録画
原作■小泉八雲 脚本■水木洋子
撮影監督■宮島義勇 照明■青松明
美術■戸田重昌 色彩技術顧問■碧川道夫
音楽音響■武満徹
監督■小林正樹

■「黒髪」「雪女」「耳無法一の話」「茶碗の中」の4編からなるオムニバス映画で、小林正樹の異常に粘る演出を嫌って京都の撮影所が借りられなかったため通常の撮影所を使用せず、特別に自動車倉庫だか飛行機の格納庫だかを改造して撮影用ステージを特設して巨大セットを何杯も建てこんで撮影されたという、異様な超大作時代劇だ。製作費は最終的に3.2億円を計上し、大赤字を出してにんじんくらぶを解散に追い込んだ呪われた映画である。
■だが、如何せん小林正樹の幻想絵巻は怪奇映画的情緒が皆無で、一言で言えばセンスが無いので、どうしようもないという印象の困った映画である。カンヌでカンヌ国際映画祭審査員特別賞をとったりしたせいで、なんとなくそれなりに凄いのかと誤解してしまいがちだが、3時間という長丁場を我慢して観るのが苦痛な冗長な映画である。ただし、「茶碗の中」を除いて。
■「雪女」は後の大映京都の傑作「怪談雪女郎」を導き出したという意義を認めないわけではないが、美術にしろ照明にしろ、大映京都の様式美の完成度の高さを浮かび上がらせる反面教師としての存在意義が大きいだろう。岸恵子の雪女の初登場場面などは、雪女郎とほぼ同じ画面構成も見られ、田中徳三も本作を意識したことは確実だろう。
■とにかく、ステージ内に構築した異様に大きな美術セットは圧巻で、特に「耳無し法一の話」で、幻想世界の平家の亡者たちが居並ぶ屋敷のデザインなどは、狂気を感じさせるほど。しかし、全編に多用されるホリゾントの効果が稚拙で、画面を平面的で舞台的に感じさせる。舞台的にするにしても、もう少し工夫の仕方があるはずで、たとえば島倉二千六がホリゾントを描けば、もう少しリアルで立体感がありながら、幻想的でもあるという映画的な背景になったはずなのだが、本作のホリゾントの扱いはほんとに酷いよ。
■だが、最後の「茶碗の中」は不条理な怪異サスペンスとして成功しており、主演の中村翫右衛門のリアルな武士像や、仲谷昇の不気味な登場、その家来を演じる佐藤慶天本英世玉川伊佐男の三人組という楽しさもあるが、ラストの異界から手招く滝沢修で見事なオチとなる凝った構成が勝因だろう。このエピソードを観ると、小林正樹もこうした映画に全く素質が無いわけではなく、前三作では敢えて紙芝居的に演出したことがはっきりする。
■しかし、どう考えても、こうしたお話を映画化するのに、ここまで大きく構える必要性が全く感じられず、それこそ大映京都などで普通に撮っておれば、何分の一かの予算でもっと見栄えの渋い怪談映画が出来上がっていただろう。映画のなりたちから全てにおいて狂気を感じさせる異形の存在であることは確かだ。