崖の上のポニョ ★★★

崖の上のポニョ サウンドトラック
崖の上のポニョ
2008 ヴィスタサイズ 101分
ユナイテッドシネマ大津(SC3) 
原作・脚本■宮崎駿
作画監督近藤勝也 音楽■久石譲
監督■宮崎駿

■すでにいろんなところで語られているように、通常の劇映画のルールを無視して、作者の夢想の世界を、夢のルールのままに映画化したという、巨匠ならではの贅沢な遊び、それがこの映画である。同時にそれは困ったことでもあるが、アニメの画力だけで100分間押し切る馬鹿力は、宮崎駿ならではのものだろう。スクリーンに繰り出される万物の幻想的なアクションには動画魂が素朴な形で露呈している。前作「ハウルの動く城」では、通常の劇映画のセオリーが無視されていることが欠陥と感じられたが、本作ではそれほど致命的ではない。
■アニメ力の発露としては、映画中盤の津波のシーンが白眉で、この場面はワルキューレの騎行風の音楽に乗せて、人間の女の子の姿になったポニョが車に乗った少年を追いかける場面なのだが、その映像的スペクタクルはさすがに圧巻だ。本作では、とにかく水の表現にアニメ魂の粋をつぎ込んでおり、この場面の巨大な魚に姿を変えた津波の、とろりとした粘着質な水の運動表現は、ファンタジーならではの主観的表現といえるだろう。その波のメタモルフォーゼが持つ生命感は他に比類が無い。
■いっぽうで登場する人間たち(大人たち)には全く見事に存在感が無く、ファンタジーといえどもあまりに杜撰な設定で鼻白む。特にひどいのはポニョのお父さんのフジモトという人物。所ジョージは全くのミスキャストで、あまりに下手なので観ていて腹が立つし、老人ホームの老女たちも、いったいどこの国のひとですか?という有様である。しかし、海で拾ってきたポニョをいきなり水道水の中で泳がそうとする様子がなんのためらいも無く提示される世界観のなかでは、何を言っても虚しいだけだろう。
■製作はスタジオジブリ日本テレビほか。

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