蛇イチゴ ★★★

蛇イチゴ蛇イチゴ
2003 ヴィスタサイズ 108分
テレビ大阪録画 
脚本■西川美和
撮影■山本英夫 照明■?
美術■磯見俊裕 音楽■中村俊
監督■西川美和

■爺さんの死で父親の嘘が露呈し、一気に平和な家族の幻が崩壊したとき、勘当された兄(宮迫博之)が帰ってくると父親の借金を帳消しにする算段を始めるが、嘘で固めた彼の半生を知る妹(つみきみほ)は、彼を信じることはできない・・・
西川美和の監督デビュー作で、一見平和な家庭が喫水線の下に隠す実像を露呈し始めるという、昔懐かしい山田太一のテレビドラマのような展開だが、人間たちに対する嫌味を込めた描き方にこの監督の特徴があるだろう。年若くして人間観察に老成した、というよりはもって生まれた、あるいは成長するなかで自然と身についたシニカルな視点と観察眼なのだろう。それは決して心地よいものではなく、非常にグロテスクなものだ。観ていて家族風景の寒々しさに戦慄するところがある。ユーモアが味付けされているのだが、それは異なった要素が渾然一体となって立体的な人間像を成立されるというよりも、この監督のもっと危うい人間像の把握の仕方を浮き上がらせる。
■ただ、ラストの蛇イチゴの解釈には多々腑に落ちないところがあり、いまは保留にしておきたい。脚本を読まないと意図ははっきりしないだろう。映画としてそれでいいのかどうかとも思うぞ。山本英夫キャメラは作品によってばらつきが大きく、本作のキャメラは褒められない。
■近年の日本映画では超低予算の家庭劇で若手監督が続々デビューしており、その嚆矢となった映画だろうが、「酒井家のしあわせ」などのほうが個人的には好きだ。「ゆれる」も含めて、西川美和の映画にはあまり世評ほどの魅力を感じないのだが。この監督は、むしろ心理ホラーなどを撮るとえげつなく怖い映画を撮ってしまう人なのではないか。
■製作はバンダイビジュアルエンジンフィルムほか、制作はテレビマンユニオン

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