告発のとき ★★★☆

IN THE VALLEY OF ELAH
2008 スコープサイズ 121分
TOHOシネマズ二条(SC9)

告発のとき
■2004年、イラク戦争から帰還した兵士の父親(トミー・リー・ジョーンズ)に、兵士が行方不明との連絡が入り、その後、基地近くで無残な遺体となって発見される。死の真相を求める父親に、女性刑事(シャーリーズ・セロン)が協力し、帰還兵たちの人間関係を調査しようとするが、軍の妨害工作が・・・
■近年「ミリオンダラー・ベイビー」「クラッシュ」「父親たちの星条旗」と大活躍のポール・ハギスの監督、脚本作で、実話に基づいた力作。特に捻った作りではなく、実に素直にオーソドックスに作った映画だ。撮影は巨匠ロジャー・ディーキンスで、銀残しで彩度を落としながら、アンバーというかイエロー系統のルックでアメリカを覆う無残な現実を乾いたタッチで描き出す。これは実に立派な仕事だ。
■警察署内では浮いている女刑事をシャーリーズ・セロンが演じているのだが、あまりに巧いので驚いた。まだ「モンスター」を観ていなかったのだ。性差別のなかでみずからの才覚(と女の武器)で刑事に這い上がった叩き上げの女刑事で、未婚の母という役柄をさらりと演じながら、説得力があり、その聡明な美貌も地に足のついたものになっている。
■捜査で明らかになるイラク派遣兵士達の心理的荒廃については、そのエピソードも含めて特に衝撃的なものではないが、一貫した静かな語り口が、戦争に疲弊しきったアメリカの困難を切々と訴えかける。ラストの国旗を使った表現も、その訴えの切実さを全く隠そうとしていないことを表明している。ただ、さすがにポール・ハギスの一連の作品世界には、少々辟易していることも事実で、もっと楽しい映画に仕立ててくれてもいいのではないかと思うぞ。なぜか新藤兼人の生真面目さを連想してしまうのだが。

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