松ヶ根乱射事件 ★★★

松ヶ根乱射事件 [DVD]
松ケ根乱射事件
2007 ヴィスタサイズ 112分
DVD
脚本■向井康介佐藤久美子山下敦弘
撮影■蔦井孝洋 照明■疋田ヨシタケ
美術■愛甲悦子 音楽■パスカルズ
監督■山下敦弘

相米慎二のようでもあり、神代辰巳のようでもあり、コーエン兄弟のようでもあり、カウリスマキ兄弟のようでもあるオフビートな犯罪映画。狙い目はわからんではないが、私の趣味ではない。
■この後で、たまたま「祭りの準備」を観たのだが、お話の根幹がほとんど同じじゃないか。田舎の人間たちが織り成す、ある意味では今村昌平的な、性的にふしだらな人間関係に、日本の、青春の絶望を見出してゆく物語なのだ。「祭りの準備」では、とにかくそこから逃げ出すことで、一定の解決を見、主人公は狂わずに済んだわけだが、ここでの主人公の警官は逃げ出すこともできず、ただ虚空を射撃することでギリギリの精神のバランスを取ろうとする。
山下敦弘は「天然コケッコー」でも田舎の人間を描くにあたり、性的なルーズさと交換理念のルーズさに注目している。それは倫理観の麻痺というよりも、現代的な倫理観の成立以前の近代化前の日本人の人間関係の原像を感知しているように思える。いっそのこと、津山三十人殺しでも映画化すれば集大成として立派な映画ができるのではないか。
■製作はシグロ、ビターズ・エンド他。

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