ミスト ★★★☆

ミスト Blu-ray

ミスト Blu-ray

  • 発売日: 2016/02/17
  • メディア: Blu-ray

THE MIST
2008 ヴィスタサイズ 125分
ユナイテッドシネマ大津

■突如発生した濃霧のためスーパーの店内に閉じ込められた人々を、更なる恐怖が襲う。霧の中には得体の知れぬ謎の生物が潜み、人間を喰らうのだ。現実路線でサバイバルを試みる一派と、神の代弁者と称する狂信的なカリスマに従う一派が対立してゆく・・・
■ラスト15分の衝撃云々と宣伝されている本作だが、実際には特に衝撃的とか後味の悪さというよりも、その寓意に思いを致すべき映画だ。脚本、監督のフランク・ダラボンはホラー映画の秀作でデビュー当時名を売った人物で、その後に参加した大作系ホラー映画でも、骨太な筋の良さを発揮してきた逸材なので、今作も素直なサスペンスホラーではない。
■濃霧の中に潜む異形の物についても、その発生原因が明かされるのだが、特に意外なものではなく、本来この映画の狙いは、極限状況下でむき出しになる人間性をサスペンス映画として提示するところにある。その意味では「吸血鬼ゴケミドロ」などが直接の祖先にあたる。ただ、例えばヒッチコック的な意味でのサスペンスとしては構成されておらず、むしろ登場人物の造形に力を注いでおり、人間達のぶつかりあいのあり方に地味なサスペンスを織り込もうとする。
■その意味では、純粋ホラーとして撮るなら、もっと恐怖と笑いのメリハリを効かせるべきところなのだが、ダラボンの演出は真面目一方だ。しかし、この映画のために用意された原作にないラストは、この映画が寓意の込められた悲喜劇であることを示しており、それならば前半からもっと絶望的状況が同時に喜劇的であることを打ち出しておくべきではないか。妙に生真面目に終末的状況を積み上げてきたために、ラストの状況が逆に喜劇に見えてしまったのだが、それで良かったのだろうか。
■映画に込められた寓意は、軍部の主導下、情報を遮断された閉鎖的な状況で恐怖に晒された人々が、結果的に誤った判断を下してしまうというもので、軍官産の好戦的な体制で戦争に誘導されたアメリカ国民の置かれた状況を戯画化している。しかし、そうした寓意よりも、ラストに登場する圧倒的な怪物の存在感のほうが、映画的に思われる。原作どおり(らしい。有名な原作は持っているが未読)終わったほうが、SF的であっただろう。

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