暗いところで待ち合わせ
2006 ヴィスタサイズ 129分
DVD
原作■乙一 脚本■天願大介
撮影■古谷巧 照明■今野健
美術■稲垣尚夫 音楽■めいなCo.
VFXプロデューサー■篠田学 VFXスーパーバイザー■進威夫
監督■天願大介
■ひとり暮らしの全盲の女性(田中麗奈)の家に忍び込んで気配を消して暮らす男。近くの駅で起こった殺人事件の容疑者として追われる男は、女性に危害を加えるでもなく、ただそこに潜んでいるのだったが、やがて女性は家の中の異変に気づき・・・
■脚本自体はよくできたサスペンスで、十分ウェルメイドなのだが、おおきな欠点が約2点あるせいで、実に鑑賞が辛い映画になっている。
■1つめは、演出のテンポが遅すぎる点で、開始当時の土曜ワイド劇場などでそのまま映像化できるような物語を語るのに、130分も費やしていることだ。これは明らかに100分程度に収めるのが常識というものだろう。
■2つめの問題は、田中麗奈の演技が130分を支えきれていないことだ。もし女優の演技や心理描写に繊細なサスペンスが盛られていれば、130分であっても観客の集中力を維持することは不可能ではないのだが、田中麗奈にそうした存在感が感じられないのだ。正直なところ、田中麗奈の演技と存在感のあまりの劣化ぶりに愕然としてしまったことを告白しておこう。ショットによっては、というか重要な場面で、彼女の姿が小さなおばあさんにしか見えない部分があり、衝撃を受けた。
■佐藤浩市、原史奈、宮地真緒、岸部一徳と配役はやけに豪華だが、ビデオ撮影の低予算デジタル映画である。一番のみどころは井川遥の使い方で、これは衝撃的だ。駅のプラットホームの場面は出色な演出だっただけに、全体を覆うゆったりしすぎたリズムのあり方に疑問が募る。