西遊記 ★★

西遊記
2007 スコープサイズ 120分
DVD
脚本■坂元裕二
撮影■松島孝助 照明■吉角荘介
美術■清水剛 音楽■武部聡志
特撮監督■尾上克郎 VFXプロデューサー■大屋哲男
VFXスーパーバイザー■道木伸隆 画コンテ■ヒグチしんじ、中野☆陽 VFXデザイナー■丹内匠
監督■澤田謙作

■2時間の時間を持て余す子供だまし映画の決定版。お話自体は極めて単純なのだが、各シーンをダラダラと引き延ばし、時間切れの中国ロケを国内ロケとブルーバック撮影で糊塗するため、画調もバラバラで、色味だけについては、IMAGICAのDIで触りまくるので、砂漠のシーンなどモノクロ映画の人工着色のような不自然な色彩が観ていて気色悪い。ほとんど褒めるべきところが見当らない、子供映画としての誠実さが見当たらない、正真正銘の金儲け映画だ。

VFX特撮研究所がミニチュア撮影と素材撮影を行っているが、個々の見せ場のアイディアに冴えが無いし、クライマックスの金角大王との見せ場も、いかにもブルーバック合成という狭苦しい作りで、いいところが無い。唯一、銀角大王との空中戦をCGで描き出した場面は、やはり樋口真嗣のコンテだろうが、激しい視点移動を伴うキャメラワークが特徴で、雲のCGの出来栄えもピカイチなので、見ごたえがある。演出としても堺正章版「西遊記」の特撮演出(鈴木清)を意識したコミカルなアクションが楽しい。

■せめてアクション映画としての骨格を堅持してくれれば、それなりのカタルシスも味わえるはずだが、人間はひとりひとりは非力な存在だが、仲間を作って連帯することができるところが凄いんだというメッセージが宙に浮いてしまうのは、人間側のエピソードがちっとも描けていないせいだ。作りようによってはアクション映画になりうるのに、殺陣に工夫も無い。せめて横山誠にアクション監督を任せるとか、真面目に考えるべきだった。

■そんななかで、唯一の慰めはお姫様を演じる多部未華子のチャーミングさだ。一服の清涼剤というやつですな。こんな映画に出ていたことすら知らなかったのだが、知らず知らずに多部ちゃんに引き寄せられるとは・・・愛の力だねえ。

■製作はフジテレビ、東宝ほか、制作プロダクションはシネバザール。

参考

坂元裕二はこのあとなぜか進化と変態を遂げて、すっかりソフィスティケーティッド・コメディの人になってしまった。信じられる?
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