HINOKIO ★★★

HINOKIO ヒノキオ [DVD]
HINOKIO
2005 ヴィスタサイズ 111分
DVD
原案■秋山貴彦 脚本■秋山貴彦、米村正二、末谷真澄
撮影■岡雅一 照明■吉角荘介
美術■池谷仙克 音楽■千住明
VFX&監督■秋山貴彦

■この映画、INTER GALACTIC LOVE という副題が付いているところが曲者で、HINOKIOというよくできたロボットが主役のSF映画ではないのだ。この部分に関するこだわりは秋山貴彦のものらしいのだが、この映画の弱点も実はそこにある。

■この映画は、”煉獄の塔”というテレビゲームと現実世界がリンクしているというエピソードと、心を閉ざした少年の代わりにロボットが学校に通うというエピソードが無理やり重ねあわされており、そこに監督の熱い意志が働いているのはよくわかるが、一本の映画としては実に据わりが悪い。

■そのことは、フォトリアルなHINOKIOの日常を描くCG,デジタル合成場面が日本映画離れした完成度を示して凄いのに、近未来のテレビゲーム(ビデオゲーム?)のCG映像が現在のそれとなんら変わらないというアンバランスさにも表れている。本当なら、映画版ファイナル・ファンタジーくらいのリアルなCGでヴァーチャル世界を描き出さないと成り立たないだろう。実際、ゲーム世界の映像が相当多く、しかも劇的に重要な場面を構成するのに、CG映像に魅力が無く、平板なので、映画として緊張感を維持できないのだ。

■しかも、ヴァーチャル世界との往還をクライマックスとしたドラマはあまりにも陳腐で、ほとんど説得力を持たない。物語の本来の中心は、ゲーム世界と現実世界の往還にあるのだが、ギミックとしてのHINOKIOがよく出来すぎていたために、中心点がずれてしまったのは、大きな誤算だろう。

HINOKIOが学校に通い、ボロアパートに寂しく帰宅する場面は超リアルなのに、クライマックスのオバケ煙突の場面のデジタル合成など、いかにも絵に描いたような合成場面で、統一感が無い。ヴァーチャル世界と現実世界の狭間を描くという演出意図はわからないでもないが、見ていて単純に不自然に感じられてしまうのだ。

■その意味で、岡雅一のキャメラは抜群の働きで、演出家の経験不足をよくカバーしているが、なんといってもこの映画が辛うじて成立しているのは、実質主演の多部未華子をはじめとする子役たちの個性が粒ぞろいであることに拠っている。特に中性的なきりりとした表情の多部未華子は、彼女主演のアイドル映画といっても過言ではないほど、刹那的な美しさに満ちている。



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