次郎長三國志 次郎長賣出す ★★★☆

次郎長三國志 次郎長賣出す
1952 スタンダードサイズ 82分
NFC
原作■村上元三 脚本■松浦健郎、村上元三
撮影■山田一夫 照明■西川鶴三 
美術■中古智 音楽■鈴木静一
監督■マキノ雅弘

■米屋の倅長五郎(小堀明男)が酒の上での喧嘩でヤクザを殺したと思い込んで流れ者になるが、そのうち鬼吉(田崎潤)という子分ができ、綱五郎(森健二)、侍崩れの政五郎(河津清三郎)という子分もできる。渡世の義理から喧嘩出入りに加勢することになるが、政五郎は次郎長にむしろ喧嘩の仲裁役となることを進言する。

■世に有名なマキノ雅弘監督による東宝次郎長三国志シリーズの第一作。次郎長を小堀明男というちょっとボンヤリした鷹揚な感じの役者に演じさせた意図が良くわかる作品だ。つまり、いかにして大親清水の次郎長が出来上がったかというところを丹念に描くためだ。

■実際、ここでは次郎長がそれほどの大人物とは到底見えないように描かれ、特に際立った働きを見せることもない。むしろ押しかけ子分の鬼吉の信奉や知恵者政五郎の進言によって親分の柄に育ってゆくという物語で、カリスマ的な親分が上意下達で組織を作り上げてゆくのではなく、子分たちの知恵と忠誠で一家が出来上がってゆく様子が爽やかに、感動的に描かれる。そういう意味では、いかにも東宝らしいサラリーマン映画の一変種と見えなくもない。

■自ら志願して原作を映画化させたという田崎潤が桶屋の鬼吉を快演し、後の東宝特撮モノでは見られない軽快な演技を見せる。その淀みのない若々しい笑顔が眩しい。

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