リンダ リンダ リンダ ★★★☆

リンダ リンダ リンダ
2005 ヴィスタサイズ 114分
DVD
脚本■向井康介、宮下和雅子、山下敦弘
撮影■池内義浩 照明■大坂章夫
美術■松尾文子 音楽■ジェームズ・イハ
監督■山下敦弘

 韓国からの留学生を即席でスカウトして結成した女子高生バンドがブルーハーツの楽曲で学園際に出演するまでを描き出した正統派青春映画だが、監督が若手のホープ大阪芸大出身の山下敦弘なので、演技と台詞の間を重視した独特のリズム感が主張され、ハリウッド映画のようなわけにはいかない。物語の基本はいかにもハリウッド映画的な着想だが、その作劇のありかたや演出スタイルは反ハリウッド的だ。といっても相米慎二カウリスマキの映画の長廻しのリズム感がベースになっているので、日本映画の観客にとってはなぜか懐かしい感じがするのだが。

 なぜか「ばかのハコ船」も「リアリズムの宿」も観ており、劇的なメリハリを避ける映像スタイルは個人的には決して好きなスタイルではないが、本作ではかなり営業的に譲歩しており、ラストのコンサートの場面もきちんと通俗的に盛り上げてみせる。相米慎二の「台風クラブ」のような狂暴な展開にはなりはしないが、ラストに突然降り出す大雨には「台風クラブ」への眼差しが感じられる。

 主演(一応)のぺ・ドゥナが飾らない役作りで、その変な持ち味がよく活かされている。映画の撮影時、24歳だったというが、香椎由宇が素材の硬質な持ち味の一端が表現された程度に過ぎないのに比べ、伸縮自在な表現力が念入りに強調されている。彼女を決して可愛くは撮ろうとしない演出の姿が、製作プロジェクトの根幹にあったと推測される日韓の文化交流という趣旨(ホントかよ)を誠実に実践している。

© 1998-2024 まり☆こうじ