悪魔の手毬歌 ★★★

悪魔の手毬唄 [DVD]
悪魔の手毬歌
1977 スタンダードサイズ 144分
DVD
原作■横溝正史 脚本■久里子亭
撮影■長谷川清 照明■佐藤幸次郎
美術■村木 忍 音楽■村井邦彦
監督■市川崑


 おなじみ鬼首村の惨劇の真相は、ひとりの母親の心のなかにあった。
 このシリーズの受けた原因は、原作の要素である血縁を巡る大時代なメロドラマを、市川崑らしい洒脱な映像演出と編集で描き出したミスマッチな部分にあり、本作でもその良質な結合を観ることはできるが、改めて観ると、どうしてもクライマックスの愁嘆場がくさいので、困る。有名なラストの「あなた、リカさんを愛してたんですね」という直截な台詞にも困ったものだ。昭和30年代の全盛期の市川崑では考えられない野暮ったさだ。
 ただ、中村伸郎若山富三郎辰巳柳太郎といった名優たちの演技合戦は見事で、東宝ではもっぱら理知的な役柄を演じていた中村伸郎が、珍しく得体の知れぬいやらしさを秘めた人間像を鮮烈に演じて、まさにトラウマ演技となっている。結局大した役ではないが、辰巳柳太郎の豪快な怪演は配役の妙で、実に味わい深いし、怪演では白石加代子も負けておらず、ひとりで怪談めいた雰囲気を振りまく。
 でも、この映画でいちばん凄いのは、手毬をつく子供大の人形のイメージで、これは子供に人形の面(特殊メイク)を施して、しかもゆっくりと弾む鞠の動きは高速度撮影ではなく、操演で(多分死角から)操作しているようだ。まさに、悪夢的なイメージで、恐ろしい。

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