人非人キャラがすっかり定着した西島秀俊(実はかなりのシネフィルらしい)が牧史郎を演じるという意外性も物好きの間では話題だったが、心配しつつ観た3本は、それほど酷くはないが、「BLACK OUT」のほうが、よっぽど怪奇大作戦だったよな、という程度の出来栄えだった。
2作目「昭和幻燈小路」*1はいかにも晩年の実相寺らしい幻想譚で、予想通りストーリー性に欠ける散漫な物語で、実相寺本人が幻想的な映像マジックで撮ったらそれなりに誤魔化されたかもしれないが、北浦嗣巳には荷が重いだろう。というか、もっとちゃんとした脚本で撮らせてやれよ。
3作目の「人喰い樹」*2は、花粉症をモチーフに、人間と植物の融合を怪奇な味付けで描いた一編で、いかにも中田秀夫という冒頭の恐怖描写が嬉しいが、個人的には小林雄次の脚本には安普請とか未熟といった印象しか無いので、どうも嘘臭いお話に終始した。この作者の場合、フィクションの組み立て方の濃度というか、強度というか、フィクションに説得力を持たせる要素が欠けていて、どうしても頭だけで書いた若書きという印象が強いのだ、物語の核心になる杉の樹の佇まい自体が、物語を支えるほどの存在感を持っておらず、どうもイメージ的に貧乏くさいのも、難点。
で、結局振り返ってみると、1作目の「ゼウスの銃爪」*3が、未成年の犯罪とか人体自然発火とか、謎の外国人組織といったネタを自在に組み合わせて、嘘臭さのなかに奇想天外な面白さを感じさせる点で成功作といえるのかもしれない。時事ネタを積極的に取り入れるのはオリジナルの怪奇大作戦のフィクション作りのスタンスだが、それを踏襲した部分が若干硬直しているのだが、清水崇の演出力で乗り切っている。決して、ホラーな演出を披露しているわけでもないし、人体発火のVFXは噴飯ものの、なぜかコミカルな表現になっているのだが、盛りだくさんの趣向で最後まで飽きさせない。
でも、やっぱり「BLACK OUT」が懐かしく想い出されるなあ。