ドリームガールズ ★★★★

DREAM GIRLS
2007 スコープサイズ 130分
TOHOシネマズ二条(SC8)


 モータウンサウンドなどに何の興味もない音楽音痴(?)にとっては、敷居の高い映画というイメージで敬遠していたのだが、別に何の予備知識も必要なく、音楽と映画の悦びを満喫することのできる傑作であった。もっと早く観ておくべきだった。今ならどこかのシネコンでまだ上映中なので、是非大スクリーンでの鑑賞をお奨めする。見逃すと損をする映画だ。

 物語は単純ながら、音楽業界で自分の才能を自覚し、自己主張することのできる聡明な娘が辿る皮肉な運命を圧倒的な歌唱とショーマンシップで見せきる大迫力の一作で、普通の映画2本分くらいの充実感がある。エディ・マーフィビヨンセジェイミー・フォックスといったベテランを脇に従えて、堂々の主役を張るジェニファー・ハドソンは全世界中の賞賛を浴びるに相応しい熱演だ。アカデミー賞では最優秀助演女優賞だが、実質的には主役なのだ。

 また、脇役ながら抑えきれない熱い”ソウル”に殉ずるシンガーを快演するエディ・マーフィーにも賞を進呈すべきだろう。生放送で、生ぬるいバラードなんか歌ってられるかとズボンを脱ぎだす捨て身のパフォーマンスは、男の生き様として実に見事で感服した。エディ・マーフィに感動させられるとは思いもしなかった。

 監督のビル・コンドンは「ゴッド&モンスター」などを撮っていた男だが、いつからミュージカルの名手になったのか。オリジナルの楽曲の完成度の高さもあるだろうが、見事な映画化である。ミュージカル舞台の映画化としては「オペラ座の怪人」のシュマッカーよりも一段上手である。

 アメリカの芸能力の奥深さを思い知らされる超強力な一作で、本年これ以上に充実した映画にはお目にかかれないだろうと思われる。

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