![李香蘭 [DVD] 李香蘭 [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41GuAGaBT7L._SL160_.jpg)
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: DVD
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波乱に満ちた李香蘭の半生を、「満州篇」と「上海篇」の2部構成で劇化した4時間30分弱に及ぶスペシャルドラマ。
結局のところ、本人が健在ということもあり、思い切った劇化はなされず、自伝のエピソードを満遍なく拾い集めた風情の平板なドラマであるが、本人の半生に日本の昭和史が否応なく骨がらみとなっている部分が興味深く、昭和前半の日本と中国の関係の軋轢の中で引き裂かれたものの象徴として李香蘭が描かれている。まあ、それは劇化というよりも実際にそのとおりだったわけであるが。
当然、川島芳子(菊川怜*1)、甘粕正彦(中村獅童)、川喜多長政(沢村一樹)、内田吐夢(鶴田忍)、マキノ光男(徳井優*2)、辻久一*3(俳優不明)、服部良一(前田耕陽)といった実在の人物が続々登場し、どこまでが史実でどこまでが創作か不明なドラマを展開する。印象としてはかなり史実に忠実ではないかと感じたが。抗日ゲリラに身を投じる中国人の女友達のエピソードと、「私はいつまでも淑子ちゃんの天使よ」と語るロシア人の娘が李香蘭の窮地を救うエピソードが、李香蘭を中心ととして両翼に配置され、歴史の過酷さとともに、政治的な思惑や国家的な利害関係を超えて、直接的に結びつくことで人間どおしはわかりあえることを明快に語りかける。
また一方で、李香蘭の唄う数々の有名曲をたっぷりと聞かせる音楽映画としての要素も併せ持ち、上戸彩がかなりの部分を自分自身で唄っているが、難しい中国語の歌は吹替えになっている。
ほとんどの撮影は上海の撮影所やオープンセットで行われたようで、モッブシーンの日本人などはほとんど中国人らしいが、かえって戦前の日本人の雰囲気を感じさせるから不思議だ。
しかし、このドラマの魅力の勘所は主演を上戸彩に演じさせるという抜群の興行師的アイディアの鋭さであり、いつまで経っても中学生のような幼いあどけない容姿でかなりきわどいチャイナドレス姿を披露するマニア泣かせの趣向のあざとさであろう。どう考えてもミスマッチな役どころで、しかも中国語の台詞もあれば、歌もあり、ほとんどを中国で撮影するという難役を、天性のボケ味で消化してしまった上戸彩はアイドル女優としての器の大きさと華を見せつけてくれた。その天真爛漫さは過酷な昭和史の中心点の一つであった李香蘭の存在を普遍性の地平に昇華させている。(といったら言い過ぎだな。)
maricozy.hatenablog.jp
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