ウルトラマンメビウス#32「怪獣使いの遺産」

 遂にオンエアされた「怪獣使いの遺産」は、当然「怪獣使いと少年」のような赤裸々な表現は今の時代のテレビでは不可能だし、ニューシネマの時代でもないから甘い味付けにならざるを得ないのだが、メイツ星の宇宙船を探して穴を掘り続ける少年の少し成長した姿を提示したところは、うまい工夫だった。
 本編の物語は斉藤ゆう子が唐突に介入した途端にホームドラマに転調してしまうので腰が砕けるし、相変わらず熱血漢というよりも傲慢不遜な態度が腹立たしいリュウ隊員はここでも自分の犯した過ちに何の反省も無く宇宙人を恫喝するとんでもない奴である。
 しかし、少しお兄さんになった佐久間良少年が少女(後の斉藤とも子)と微かに触れ合うシーンと、ラストの少年の消息を伝える場面だけで値打ちのあるエピソードだった。
 佐久間良少年は、炭鉱閉鎖でかの地に流れ着いて土建屋で身を立てる社長に穴掘りの技量をかわれて引き取られ、その後のバブル景気を背景にがむしゃらに成り上がり、地元住民に対する拭いがたい怨念と復讐の念を背景に、いまや地元一帯を暴力と恐怖で牛耳る陰の権力者となっていた。彼の新規開発地に着陸したUFOから現われたのはかつてのメイツ星人の息子だった。友好の道を探るGUYSやメビウスを尻目に、佐久間良はデマと噂をばら撒き、地域住民の宇宙人に対する恐怖心を煽り、住民たちにUFOを襲撃させるのだった・・・なんて嫌な展開にならなくて良かった、良かった。佐久間良の物語はまだ閉じられてはいないのだ。

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