雪夫人絵図 ★★★

雪夫人絵図 [DVD]雪夫人絵図
1950 スタンダードサイズ 88分
BS2録画
原作■舟橋聖一 脚本■依田義賢舟橋和郎
撮影■小原譲治 照明■藤林甲
美術■水谷浩 音楽■早坂文雄
合成撮影■天羽四郎
監督■溝口健二


 横暴で放蕩三昧な夫(柳永二郎)に仕える華族の”おひいさま”である妻(木暮実千代)の性と絶望を粘っこく描き出す文芸エロ映画。もちろん、直接的な性描写は不可能だが、心底嫌いながら、求められると身体に火がつく淫蕩な華族の女の姿をしんねりと描き出して、その執拗な演出に圧倒される。
 実際、後に脚本家として有名な成澤昌茂が68年に「雪夫人繪圖」としてリメイクしたが、お蔵入りになり(多分映倫と揉めたのだ)、なぜか日活で公開されたという曰くつきの原作なのだ。
 しかし、ここでは天羽四郎の作画合成を褒めておこう。後の大映時代の溝口健二からは想像できないが、ここでは華族の豪邸周りの情景描写にふんだんに作画合成を用い、しかも、モノクロ映像のせいで、実に自然に馴染んだ見事な合成を見せてくれる。ナイトシーンなど、よく考えれば、撮れるはずのない画面の各所にピッタリとピントがあった画が実に自然に提示され、ついつい見とれてしまう。もちろん、作画自体は天羽四郎ではない(天羽は合成撮影担当だろう)はずだが、岡田明方や渡辺善夫といったマット画の名人が関与しているのではないかと推察する。

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