CREEP
2004 ヴィスタサイズ 85分
DVD
地下鉄の最終便に乗り遅れた女(フランカ・ポテンテ)は、後を追ってきた同僚の男に襲われるが、寸前のところで男は何者かに惨殺されてしまう。助けを求めて地下構内に住むホームレスの男女と知り合うが、彼らも地下に棲む何者かに殺される。彼女は朝まで生き残ることができるのか・・
零時三十四分という邦題はなかなか上出来で、地下鉄の終電後の閉鎖空間の恐怖に着目したところはよかったが、怪物の安易且つ悪趣味な設定は大きな減点要因だ。
もちろん、主人公ひとりが逃げ回ってもドラマにはならないので、クスリでラリッた同僚の男やホームレスのカップルや下水道の補修人といった人々が適宜絡みながら物語を進展させてゆくので、たった一人取り残された恐怖感は希薄になっている。おまけに、地下世界の描写はリアリティよりも、迷宮空間の虚構性に重きを置いているので、そのつもりで見ると楽しめる。やはり、不思議の国のアリスを下敷きにしているのだろう。
しかも、主人公の女を演じる女優は年増でケバくて走る姿は妊婦のようにドタドタ・・・という理解に苦しむキャスティング。しかし、フランカ・ポテンテという女優、「ラン・ローラ・ラン」(未見)や「ボーン・アイデンティティ」シリーズのあの女優ではないか。ぜんぜん気づかなかったが、こんな文字通りの汚れ役よく引き受けたものだ。しかも、監督自身、この主人公を自意識過剰の嫌悪すべき人物として設定しており、原色の派手な服や厚化粧が剥がれ落ちて生身の自分自身を曝け出すまでの物語としてこの映画を規定している。
ホラーとしての道具立ては悪趣味な部分が多く、若気の至りといった雰囲気も濃厚だが、ラストシーンはその意図をうまく表現した場面で、単なる悪趣味で終わらせない監督の才気を見せる。