マイアミ・バイス ★★★

MIAMI VICE
2006 スコープサイズ 132分
ユナイテッドシネマ大津(SC6)


 マイアミ警察の特捜課の刑事コンビ、クロケットとタブス。FBIなど合衆国司法機関が行なっていた合同捜査の極秘情報がドラッグ密輸コネクションに漏洩してしまう。合同捜査に従事していた関係者全員の命が危険に晒される中、合同捜査と関係のないクロケットとタブスのコンビに情報の漏洩ルートを突き止める重要な任務が託される。2人は南米の危険地帯に乗り込み、北米のドラッグ・ディーラーになりすますと、さっそく犯罪組織への接触を開始するのだが…
 往年のテレビ番組は全く見ていないので詳しいことは何にも知らないのだが、イメージ的にはあぶデカのアメリカ版ということでいいのか?しかし、刑事コンビが軽口たたきながら悪人を掃討するというお気楽刑事アクションを期待すると、軽く裏切られる。コリン・ファレルと敵組織の重要人物コン・リーラブロマンスも大きなポイントとなるが、監督のマイケル・マンはあくまで乾いたアクション映画を志向しており、物語は単純なうえに、完結していないのだが、あくまでも大人向けの硬派なアクション映画という姿勢を崩さない。
 ランニングタイムが大作仕様なので誤解を受けやすいが、これは90分程度の小粋なB級アクション映画の発展形のひとつであり、細かい辻褄やら捻りが足りないなどといった脚本上の些細な問題はあらかじめ本作の守備範囲外と割り切って、南米麻薬組織のロケ撮影やセット撮影のねっとりとした空気感や夜空の雲まで綺麗に捉えられたマイアミの夜の撮影に悠々と身をゆだねて愉しむのが正解だ。監督がいたくご執心だったらしいコン・リーの起用も、中国映画界の名花に麻薬組織の幹部を演じさせるという奇想天外な発想だけで十分に愉しいではないか。実際、胡散臭いヒゲ面集団の中で、異色を発揮しながら、一服の清涼剤として機能しているし、コリン・ファレルとのラブシーンなど、映画的な奇想天外さが脈動して、なにかありえないものを見てしまったような眩暈に襲われる。
 事件の黒幕は逃亡するし、米捜査機関内の裏切り者はそのままだし、明らかに続編を視野に入れているはずだ。脇役で登場するシアラン・ハインズも次回作で活躍してくれるのだろう。
 「コラテラル」で使用されたデジタルビデオカメラがおそらくここでも使用されているのだと思うが、スクリーンで観るのとDVDではルックが相当異なるだろう。スクリーンでは彩度が低いくすんだ色彩で、夜景の背景の光のにじみ具合に色のずれがあったりして、ビデオ映像を加工した雰囲気が拭えないのだ。DVDではもっと発色に透明感が生まれるのだろう。
 しかし、ディオン・ビープという撮影監督、「リベリオン」「SAYURI」「コラテラル」とフィルモグラフィを見ると、当館としてはど真ん中の映像志向の持ち主らしい。

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