ゆれる
2006 ヴィスタサイズ 119分
京都シネマ
原案&脚本■西川美和
撮影■高瀬比呂志 照明■小野 晃
美術■ 三ツ松けいこ 音楽■カリフラワーズ
監督■西川美和
東京で成功した写真家(オダギリジョー)は、母の法要で帰郷して兄(香川照之)と幼馴染の娘(真木よう子)と渓谷で出かけるが、兄ともみ合った娘が吊橋から転落死してしまう。兄は犯行を自供し、裁判が開始されるが・・・
オリジナル脚本にこだわる女性監督として注目される西川美和の第2作。男性観客にとっては美人姉妹の愛憎劇というモチーフがロマンポルノその他のジャンルで愛好されているが、女性にとっては兄弟の愛憎劇が萌えるということか。裁判の過程を通してあぶりだされる兄弟の愛憎劇を旬の俳優オダギリジョーと実力派香川照之の演技合戦で魅せるという趣向だ。
実際、この脚本なら、往年の松竹あたりで、撮影所謹製のプログラム・ピクチャーとしてそのまま映画化可能な完成度で、役者の演技的な見せ場もふんだんにあり、真相発見の心理的サスペンスも十分に盛り込まれ、娯楽性にも不足が無い。実際、ロケセットではなく、ステージ撮影でコクのある映像美を見せることもできる素材なだけに、ちょっともったいない気がする。師匠の是枝監督が松竹で「花よりもなを」を撮っているから、西川美和も次回作は松竹になるのではないか。いっそのこと、釣りバカ日誌を任せてはどうか?それだけの器量はあると思うぞ。
香川照之は久々に(?)振幅のある粘着質の濃い演技を存分に披露し、いかにも心地よさげで、オダギリジョーも力演するが、この人はむしろ「メゾン・ド・ヒミコ」などのほうがはまり役ではないか。検事役の木村祐一の配役は奇策で、一定の効果を生んでいるが、野村芳太郎の「事件」を観た後では、田口トモロヲの判事役を含めて、あまりにマンガ的に見えてしまう。
地方都市のロケ、オダギリの衣装、車、劇伴等々が、なぜか70年代の青春映画風の雰囲気を醸し出すのは、演出意図なのだろうか?ひょっとして監督はショーケンをイメージしていないか?