テニスの王子様 ★★★

テニスの王子様
2006 スコープサイズ 110分
ユナイテッドシネマ大津(SC2) 
原作■許斐剛 脚本■羽原大介、アベユーイチ
撮影■清久素延 照明■横道将昭
美術■稲垣尚夫 音楽■岩代太郎
CGディレクター■土井淳 CGプロデューサー■豊嶋勇作
監督■アベユーイチ


 青春学園中等部(!)のテニス部に、アメリカ帰りの傲慢少年(本郷奏多)が入部、チームとの軋轢を経て関東大会に出場するまでを描く実写漫画映画。
 監督のアベユーイチは「ガンヘッド」の川北組助監督を振り出しに本編、特撮、CGに通じ、「ウルトラマンネクサス」のメイン監督だった阿部雄一のことだ。ここでも「少林サッカー」や「ピンポン」のビジュアルエフェクトを踏襲して、ありえない秘技の数々を披露する。撮影は東宝出身(のはず)で「ロボコン」の撮影が印象深い清久素延、助監督は特撮精通者の野間詳令だから、万全の布石といえる。
 ドラマとしては、原作マンガを過不足無くまとめたというところだろうが、「少林サッカー」ほど振り切れた発想は無いし、「ピンポン」ほどに青春映画の痛みを掬った作劇も見られないが、見せ場のテニスの場面はよく撮れているし、清久素延お得意のステディカムの縦横無尽なキャメラワークもダイナミックなアクセントを生み出している。
 一応見た目は王子様なのだが、傲慢な嫌な奴を主人公としたあたりが現代的な設定ということだろう。若手の役者ばかりだが、演技的にしっかりしているので、原作マンガのファンでなくても十分観ていられる。このあたりは相米慎二篠原哲雄に師事したというアベ監督の演技指導の賜物だろう。ヴィジュアルエフェクトに精通して、役者の演技がコントロールできるという、山崎貴樋口真嗣曽利文彦といった人々に連なる系譜が確実に日本映画に定着しつつある。
 跡部役を演じるのが載寧龍二で、デカレッドの彼だが、なかなか癖のある漫画的な役柄をしっかりと演じ切っている。

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