ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女 ★★★☆

The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch & the Wardrobe
2005 スコープサイズ 140分 日本語吹き替え版
MOVIX京都(SC1) 


 第二次大戦中、ドイツ軍の空襲に晒されたロンドンから疎開した4人兄弟は、旧い屋敷でナルニア国へ繋がる衣装ダンスを発見する・・・
 いかにも子供向けのファンタジーらしい物語で、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」シリーズよりも、明らかに子供向けの作りである。しかし、そのことはいい方向へ作用しており、極めて明快な物語が痛快さをもたらしている。
 最後にはドラマの構成が少々単純すぎることが判明し、途中の葛藤は何だったのか、という疑念も沸いてくるが、何よりも映像表現の明快さが大きな魅力だ。上述の2シリーズと比較しても、現実世界の沈んだ色調と対照的に光に溢れたナルニア国の解放的な情景は、この作品の最大の見所だ。雪に閉ざされた山中も光に溢れており、クライマックスの総力戦では、ニュージーランドロケによる明るいスペクタクルを見せてくれる。
 アスランはほぼフルCGで表現されているが、毛並みがそよ風になびく様まで丹念に描きこまれた素晴らしくリアルな描写力。ビーバー夫妻は、対照的に、擬人的な身振りを割り振り、あくまで判り易さを追及している。
 一方、白い魔女を演じるティルダ・スウィントンが素晴らしく、血の通っていない女という風情を非常に自然に表現している。ラストの剣戟場面で見せる凛々しさも上出来で、見事な敵役ぶり。大地真央による吹き替えもピッタリで、感情の抜け落ちた女を、天性の持ち味で演じ切る。
 アンドリュー・アダムソンは捻くれた「シュレック」の監督だが、別人のような素直な演出ぶりは悪くない。前半の、衣装ダンスの奥が異世界に通じる場面ではVFXを廃してカットで繋ぐ古典的な演出をみせ、家政婦に追われて衣装ダンスに逃げ込む場面では、家政婦の姿をカットインせず、足音が前後左右を回り込りこむ音響効果だけで表現したあたりの、さりげない演出の工夫は筋の良さを感じさせる。

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