徳川女刑罰史
1968 スコープサイズ 96分
レンタルDVD
脚本■石井輝男、荒井美三雄
撮影■わし尾元也 照明■北口光三郎
美術■鈴木孝俊 音楽■八木正生
監督■石井輝男
「高瀬舟」「サロメ」「地獄変」を翻案した3話オムニバスによる石井輝男の異常性愛路線第3作。オープニングから首斬り、胴切り、丸焼き、牛裂きと無残な処刑のオンパレードで観客の理性を破壊する。
共通して登場するのが吉田輝雄と渡辺文雄で、オムニバスながら登場人物が巧く絡み合うのが石井輝男の石井輝男たる所以で、描写は子供っぽい残酷絵巻でも構成にはしっかりと大人の理知と計算が働いている。
1話で妹と情を通じる職人と同心を吉田輝雄が二役演じる趣向の巧さに感心すると、3話では江戸一の刺青師(小池朝雄)の刺青に対して、苦悶のなかの悦楽が描けていないとサディストならではの批判を加えるのが、吉田輝雄の常識と対立する残虐な性癖の同心渡辺文雄だったりするから、うかうかしていられない。喰いしん坊ではなく、悪役俳優としての渡辺文雄の代表作だろう。
1話は橘ますみが異常性愛路線に咲く一服の清涼剤といった可憐な風情で演技的にもしっかりしており、時代劇らしい情感が見所で、3話は、小池朝雄と渡辺文雄の狂気のぶつかり合いが凄まじい阿鼻叫喚のなかで描かれる力作。ただ、小池朝雄に見込まれた町を演じる三笠れい子という女優が全くの素人なので、小池朝雄の足を引っ張っている。ちなみに、このエピソードを拡張したのが後の「徳川いれずみ師・責め地獄」なのである。
しかし、なぜか今回DVD化されなかった「残酷・異常・虐待物語 元禄女系図」のほうがエピソードの完成度と発想の狂いっぷりに関しては上手だろう。 そして、その違いは掛札昌裕という脚本家の参加によって生じたのかもしれない。