PROMISE ★★★

無極
2006 スコープサイズ 124分
梅田ブルク7(SC6)


 馬蹄谷の合戦で戦功著しかった奴隷(チャン・ドン・ゴン)は、連戦連勝の大将軍(真田広之)に拾われる。刺客によって負傷した大将軍は、父王の救出を奴隷に命じるが、花鎧を着けた奴隷は父王を殺し、絶世の美女傾城(セシリア・チャン)を奪って逃走する・・・
 中国、日本、韓国の合作による武侠ファンタジーで、西部劇や黒澤明の映画に想を得た大スペクタクルを「少林サッカー」テイストのVFXで描き出した冒頭のシーンからすると意外なほどこじんまりとした三角関係のロマンスに収束する恋愛映画である。その点では「LOVERS」よりも成功しているように見える。
 チャン・ドン・ゴン、真田広之ニコラス・ツェーという曲者ぞろいの豪華男優陣の演技は総じて好調で、それぞれの持ち味を生かした演出は悪くない。チェン・カイコーの演出なので、演技そのものよりも、装飾過剰気味の映像造形に精力が傾注されている印象もあるが、その美術装飾の豪華賢覧な様式美は、やはりこの映画の最大のもどころだ。
 しかし、この物語の本当の主役である傾城の描きこみ、心理描写はどうみても力不足で、このヒロインの過去と現在のもつドラマ性がほとんど捨象されているのは、おおいに疑問だ。見せ掛けの愛と富は得られるが、真実の愛を得ることはできないことを条件に女神によって生かされた少女の20年後の姿と、それに巡り合った男たちのせめぎ合いを描き出すはずが、肝心のヒロインの想いが強く打ち出されていないので、男たちの動静ばかりが浮き上がってしまう。本来この役こそ、チャン・ツィイーが適役だと思うのだが。
 大量に投入されたVFXは、かなり荒いカットも多いが、ありえないアクションの釣瓶うちは、やはり凄い。日本ではアニメでしか表現できない中華アクションがすべて実写で実現される。今川監督の「ジャイアント・ロボ」は、このスタッフで実写化可能なのだ。

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