国策捜査発動

 いよいよホリエモンが逮捕されましたが、これは胡散臭い成金にはやっぱり裏があるという一般常識的な教訓を裏書きしたに過ぎない事件なのでしょう。
 そのことを忘れて、或いは意図的に忘れた振りをして、ヒーローのように祭り上げたマスコミの無定見ぶりとそれが巻き起こす害悪はすさまじく醜いものがありました。
 これは明らかに国策捜査であり、「瓜田に履を納(い)れず 李下に冠を正さず」という結構な教えがあるにもかかわらず、敢えて瓜田を踏み荒らせば、政財界の既得権益のルールを守ろうとする者に陥れられるのは、いまどき子供でもわかりそうなものです。ただし、今回はそれが冤罪などではなく、外見に似つかわしくない実に腹黒い錬金術を駆使したようなので、自業自得というしかないのですが。こうした状態を予見できなかったとすれば、金欲に目が眩んだとしか考えられないでしょう。世の中の仕組みを甘く見すぎた、或いはマスコミや一部政治家のお追従に幻惑されたのかもしれません。
 買収した関連会社にはちゃんと実業を伴った企業もあるようですが、ライブドア本体付近はあくまでマネーゲームを基礎とする虚業なので、今回の国策捜査は結果的には、そうした実態を伴わない虚業で桁外れの大金を儲けるような商売は日本では認めない、という倫理を示す結果にもなるのでしょう。その本音の動機が政財界の既存利益の温存というところにあるにせよ、地道にしこしこと働いて手にした細かいお給金で生活を支える、この国の平均的な大多数の大人たちは溜飲を下げるに違いないでしょう。
 こんな虚業で大金を手にすることができるというルールにお墨付きがつけば、勤勉に実業に精を出す者はいなくなり、マネーゲームに耽る金の亡者ばかりになり果て、この国は自滅するでしょう。その傾向に楔を打ち込んだという意味では意義ある国策捜査でしょうが、その国策捜査が一体何者の意志で発動したのか、そのことを考えると、東京地検特捜部を安易に信頼することもできない気がするのです。

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