鉄砲玉の美学★★★

鉄砲玉の美学
1973 スコープサイズ 100分
よみうりテレビ録画
脚本■野上龍雄
撮影■増田敏雄 照明■金子凱美
音楽■頭脳警察 音楽監修■荒木一郎
監督■中島貞夫


 大阪の暴力団により、九州侵攻の起爆剤となるべく宮崎に送り込まれた鉄砲玉(渡瀬恒彦)は敵組織の幹部(小池朝雄)の女(杉本美樹)と懇ろになるが、双方の組織が手打ちをしたことを知らなかった・・・

 中島貞夫がATGで撮った伝説の映画(?)だが、いかにもアメリカン・ニューシネマなつくりで、特に傑作というわけでもない。

 東映京都撮影所を飛び出した渡瀬恒彦の若々しい弾け方が何よりの収穫で、そのチンピラの卑小な生き方の眩しさが青春映画としての生命線となっている。若者の心性がみんなチンピラだった頃の記憶を呼び覚ますとともに、今もなおチンピラであり続ける自分自身の一部分を掻き立てる生々しさを持つ映画だ。

 ただ、せっかくの渡瀬の疾走を台無しにする蛇足とし思えないラストシーンの意図が解せない。頭脳警察の楽曲をフィーチャーする商業的な必要性から生み出された演出のように見えるが、これは誤謬だろう。主題曲の「ふざけるんじゃねえよ」は傑作なのに。

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