第七のヴェール ★★★★

THE SEVENTH VEILE
1945 スタンダードサイズ 94分
BS2録画


 自殺を図った女性ピアニストの治療に当たった精神科医は、彼女の深層心理の底に潜むものを探るため、面接を行う。彼女を巡る3人の男性との交流が浮かび上がるが・・・
 深層心理のことを第七のヴェールと呼び、深層心理の解析を目論んだ精神分析的メロドラマかと思いきや、それは道具立てに過ぎず、精神科医狂言廻しの役割を演じることになる。非常によくできたメロドラマで、アカデミー賞オリジナル脚本賞を受賞したのも無理からぬことだろう。
 彼女の回想の中で語られるジェームス・メイスンとの葛藤がうまく描きこまれており、ラストの生まれ変った彼女の選択が圧倒的な感動をもたらす。そして、理想的に簡潔な形で豊かな余韻を残す幕切れ。文句のつけようが無い鮮やかさだ。
 なんといってもジェームス・メイスンの屈折した頽廃を漂わせる色気が絶妙で、日本でこれに対抗できるのは森雅之くらいしか思いつかない。

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