黄金のパートナー ★★★★

黄金のパートナー
1979 スタンダードサイズ
よみうりテレビ録画

原作■西村京太郎 脚本■長野 洋
撮影■市原康至 照明■高島利雄
美術■竹中和雄 音楽■来生たかお高中正義
監督■西村 潔


 謎のモールス信号を受信した警官(藤竜也)とカメラマン(三浦友和)の迷コンビのもとへ、行方不明の父親を探す娘(紺野美沙子)が転がり込んでくる。解読した暗号は旧海軍のもので、金塊とともにサイパン島近海に沈んだはずの潜水艦からのものだった。サイパン島を探る3人だが、娘の父親は何者かに謀殺されて発見される。金塊横領のカラクリを掴んだ3人は日本に舞い戻るが・・・

 我々の世代にとっては、日本テレビのアクションドラマの何作かで音楽的なセンスに秀でた軽妙で即興的な演出でその名を強烈にアピールした西村潔だが、映画において同様の演出手法を全面的に展開し、ある意味で総決算ともいえるロマンティックな犯罪アクション映画となっている。この後、火曜サスペンス枠で「コンピュータの身代金」とか「モナリザの身代金」といった佳作を生み出すことになる。

 なぜか音楽に来生かたおを迎え、楽曲も豊富に盛り込んで、70年代の日本映画としては明らかに異色なお洒落な能天気さをフィルムに焼き付ける。ユニチカキャンペーンガールだった紺野美沙子のアイドル映画としても機能しており、中村征夫の水中撮影も日本映画としては異例の本格的なロケが行われている。

 日本に舞い戻ってからの後半部分は、芦田伸介佐藤慶が敵役で万全の体制を敷き、交番の警官役で草野大悟が顔を見せるかとおもえば、用心棒は小林稔侍という無国籍ぶりで、気楽な楽しさが満開。これ以上楽しい映画というのもそうそうありはしないだろうという軽妙さが際立っている。明らかにCFの映像表現を参考にしたはずの市原康至のキャメラも絶品で、大林宣彦カメオ出演していることから見ても、77年の「ハウス」以降の、70年代日本映画の貧乏臭さを革新してゆく気概が継承されているようだ。

 かねてから知る人ぞ知るカルト映画と呼ばれていたが、決してそういう特殊な観客を選ぶ種類の映画ではなく、映画らしさに満ち満ちた、そして西村潔の夢見る人間関係と世界観をおそらく完璧に描きあげたアクション映画の名作であり、むしろファンタジーにまで近づいている。

 おそらく西村潔の跡を継ぐことができるのは大森一樹だったはずなのだが・・・

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