『宇宙戦争』

基本情報

宇宙戦争
(THE WAR OF THE WORLD)
2005/CS
(2005/7/2 TOHOシネマズ二条/SC7)

感想(旧HPから転載)

 ある日、突如地下から姿を現した巨大なトライポッドが人間を虐殺する場面を命からがら逃げ出した港湾労働者の父親(トム・クルーズ)は離婚した妻に子供たちを届けるために、決死の道行きを決意するが、恐怖の巷を切り抜けるため、非情な決断を迫られる・・・

 スピルバーグがシャマランの「サイン」同様にミクロの視点をとおして世界滅亡のマクロ的な危機を描き出したVFX大作。スペクタクルな見せ場にも事欠かないが、むしろ恐怖映画として演出されているようにみえる。

 近年の複雑な設定にがんじがらめで、設定を語ることにのみ腐心しがちな日本のアニメのスタンダードからすれば、極限的にシンプルといえる枠組みのなかで、あらゆる危機に対して例外ではなくなったアメリカ社会におけるホームドラマが展開され、家族を守りきるために手を汚す父親の姿が肯定される。その肯定のありようがあまりに単純なせいで映画の格が落ちてしまって説得力を欠いているのが残念だが、スピルバーグの商業主義と野心がせめぎ合った力作である。

 ある意味では、怪獣映画の変奏曲であり、巨大なトライポッドの殺戮と容赦ない破壊が正面から恐怖として描写される様子は画期的ともいえるかもしれない。何が起こっているのかわからないままに逃げ回るしかない家族の姿がダコタ・ファニング扮する娘の迫真の演技でリアルに描かれ、このジャンルに対するスピルバーグの天才を見せつける。

 ことに、異星人との戦いの成り行きを自分の目で見届けたいと戦場に駆け出す息子を静止しようとする父親の姿を、「プライベート・ライアン」の再現ともいえる異様な臨場感で描き出した中盤の山場は傑出しており、この種類の映画における新たな名シーンといえるだろう。この息子のエピソードの収束が安易で腰砕けに終わっているのが、あまりに残念である。

 その後のティム・ロビンズのエピソードの位置づけが腑に落ちず、ホラー映画的な演出についてもあまり成功していないので、後半が失速している印象があるのは、オリジナルアイディアと捻りに乏しい脚本のせいもあるのだろう。

 橋本忍版の「世界大戦争」が実現していれば、こんな映画になったのかもしれないと、ふと想う。

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