基本情報
ザ・インタープリター
(THE INTERPRETOR)
2005/CS
(2005/5/21 ユナイテッドシネマ大津/SC7)
感想(旧HPより転載)
国連で国際会議の通訳を担当しているヒロイン(ニコール・キッドマン)は、ある日深夜の会議場で不穏な会話が交わされているのを聞いてしまう。それは南アフリカ某国の独裁者を会議場で暗殺する計画だった。だが、彼女の謎めいた出自のためシークレット・サービスの担当官(ショーン・ペン)は彼女の証言に疑問を抱く。独裁者を巡って対抗勢力が暗躍するなか、彼女の抱える秘密がひとつひとつ明らかになってゆく・・・
脚本にスティーブン・ザイリアンが一枚かんでいることから期待したとおり、ストーリーテリングの細部に工夫の凝らされたよくできたサスペンス劇である。物語の大枠自体はオーソドックスなものだが、人物造形とその緊密な絡み合いは、近年の大味のハリウッド映画のなかでは異彩を放っており、あざとさよりも地に足の着いた大人のサスペンスを生み出している。捻りの効いた細部の工夫があざとく浮き上がらないのは、人物造形と演技が着実なおかげである。
おまけに撮影監督は「セブン」のダリウス・コンジで、繊細な色調とシネスコ撮影の背景のボケ味が絶妙。ニコール・キッドマンも職業柄地味目のファッションをカッコよく着こなして、知的な風貌のなかに激しい怨念を抱えた特殊な人間像を自然に体現する。ダリウス・コンジもスター女優を徹底的に美しく撮り上げてうっとりするほどの美貌に仕立てている。
いっぽうのショーン・ペンは愛妻を亡くしたばかりで、なにかというとメランコリックに泣き出すという外見のタフガイぶりとの落差がユニークなキャラクターを的確に演じて貫禄十分。この二人の間の距離感が大人の映画たる本作のおおきな見所となっている。
後半の南アフリカ某国での大量虐殺をめぐって情念を帯びた展開へ移行するクライマックスは圧巻で、ニコール・キッドマンの台詞が観るものの胸を深く抉る(ただ、演出と撮影に関しては少々平板なのだが)。架空の国家を題材としながらも社会派サスペンスとして一級品の仕上がりであり、一級の娯楽映画である。
