宗方姉妹

基本情報

宗方姉妹
1950/ST
(2003/11/22 BS2録画)
原作/大仏次郎
脚本/野田高梧小津安二郎
撮影/小原譲治 照明/藤林 甲
美術/下河原友雄 音楽/斎藤一郎
監督/小津安二郎

感想(旧HPより転載)

 無職で自堕落な夫(山村聡)を支える姉(田中絹代)と義兄を蛇蝎のように嫌う妹(高峰秀子)の確執を、姉の昔の恋人(上原謙)を介在させて描いたメロドラマ。

 一人京都に住む姉妹の父親が笠智衆で、ガンのために死期が近いという設定だが、娘婿のほうが唐突に死んでしまうという結末を迎える。

 ここでも小津の関心事は死そのものに注がれており、笠智衆は死期が近いとはいうものの、映画の表現上は既に死んでいるも同然のような位置関係に置かれており、山村聡を死の国へ招きいれたのも、きっと笠智衆に違いないのだ。

 ここでは京都という地は時間の止まった場所として捕らえられ、田中絹代はいつまで経っても古びないもの、それこそが新しいということだと妹を諭すのだが、それはつまり死の世界の謂いに相違ないであろう。

 笠智衆が既に死の中に恬淡として存在するのに対して、山村聡の死に向けてもがきながら傾斜を深めてゆくプロセスを描いた場面の禍々しい不気味さは、新東宝スタッフによる陰影に富んだモノクロの照明効果もあって完全に怪奇映画の如くである。

 ついでに言えば、天才女優高峰秀子のコメディエンヌぶりも傑作。小津には珍しく、実に感情の振幅の激しい映画である。

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