『女豹』

基本情報

女豹
1985/VV/72分
(2003/7/18 レンタルV)
脚本/内藤誠後藤大輔
撮影/杉本一海 照明/木村誠作
美術/中澤克己 選曲/佐藤富士男
監督/小原宏裕

感想(旧HPより転載)

 実に18年ぶりに観る懐かしのロマンポルノだが、新人女優田中こずえの初々しい魅力は確かに色あせてはいなかった。

 久しぶりにアメリカから故郷の屋敷に戻ってきた妹(田中こずえ)は、画家として成功した兄(佐藤幸彦)が、次々に若い娘を屋敷に招きいれては陵辱していることを知る。元看護婦の兄嫁(日向明子)が娘を農薬で殺し、ダム工事現場に埋めてい後始末をしてたのだ。妹が秘密を知ったことを悟った兄嫁は使用人たちに彼女を襲わせるが、その様子をマジックミラーで見ていた兄は妹を解放し、幼いころから惹かれあっていた二人は結ばれる。兄の追い求めていた蝶のイメージは、すべて妹の象徴だったのだ。だが、念願の作品を完成させた二人を待っていたものは・・・

 主人公が洋館に到着するところから始まり、深夜にひとり歩く女の足音に目を覚ました主人公が、地下室に若い娘が幽閉されているのを発見するが、翌日にはその姿が消えているという発端から、明らかにゴシックなスリラーを意図した稀有な脚本が、まずは秀逸。ロジャー・コーマンの「アッシャー家の惨劇」に惹かれる人なら必見といってもよい。

 改めて見直すと、白を基調とした屋敷のセットがいかにも安っぽく、屋敷のロケセットもあからさまに当時流行のペンションをそのまま利用したもので、脚本上でのゴシックな狙いが十分に画面に反映していないのは残念ながら、幼なげな風情と過剰に発達した肉体のアンバランスな田中こずえの素材を生かした上手い企画だし、その兄をまるで吸血鬼のようなメイクで演じる佐藤幸彦の存在感が映画の製作規模を超えてゴシックな雰囲気を湛えており、ビンセント・プライスや岸田森には及ばないにしろ、同じ世界の住人であることだけは確実といえる耽美的な怪演をみせる。

 「有言実行三姉妹シュシュトリアン」では日向明子を使って、東映テレビの作風とは相容れない映画的な腰の据わった演出でダークなエピソードを発表していた小原宏裕の知られざる秀作である。

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